日本とミャンマー、二つのチームで品質をつくる 海外BPOにおける「日本の役割」とは

日本とミャンマー、二つのチームで品質をつくる 海外BPOにおける「日本の役割」とは

はじめに

海外BPOという言葉から、どのような仕組みを想像するでしょうか。

日本企業から業務を受け取り、海外のスタッフが作業する。

確かに、それも海外BPOの一つの形です。

しかし、私たちは18年間ミャンマーで事業を続ける中で、それだけでは安定した品質をつくることは難しいと感じてきました。

海外BPOの品質は、海外側だけでつくるものではありません。

日本側と海外側がそれぞれの役割を持ち、一つのチームとしてつくるものです。

今回は、私たちが考える「日本側の役割」についてご紹介します。

1. 海外へ業務を渡せば終わり、ではない

海外BPOを導入すると、

「業務を海外へ移管すれば、日本側の仕事はなくなる」

と思われることがあります。

しかし、実際にはそうではありません。

業務を海外へ移管すると、日本側の仕事は「作業」から「設計・管理・改善」へと変化します。

例えば、

  • お客様が求めている品質を理解する
  • 作業ルールを整理する
  • 判断基準を明確にする
  • 現地チームへ正確に伝える
  • 品質を確保すること

です。

こうした準備を怠れば、海外チームがどれだけ優秀でも、品質は安定しません。

つまり、海外へ業務を渡した後こそ、日本側の役割が本当に始まるのです。

2. 日本側の役割①

求める意図を「言語化」して伝える

お客様からいただいたご依頼を、日本側では、お客様の意図を理解し、現場が実行できる形へ変換する必要があります。

例えば、お客様から、

「もう少し精度を上げてほしい」

というご依頼をいただいたとします。

この言葉をそのまま現場に伝えても、

「何を改善すればいいのか」

が分かりません。

そこで日本側が、

  • どの項目でミスが多いのか
  • 許容されるエラーは何か
  • どのレベルを目標にするのか
  • チェック方法をどう変更するのか

まで具体化します。

日本側は、単なる連絡窓口ではありません。

お客様の要望を「現場で実行できる仕組み」に変える役割を担っています。

3. 日本側の役割②

「基準」を明文化する

海外拠点には、日本側とは異なる文化や生活習慣があります。

そのため、

「これくらいは常識でしょ」
「言わなくても分かるはず」

という感覚に頼った指示は、そのままでは伝わりません。

日本側の役割の2つ目は、求める基準を誰が見ても同じように判断できる形に「明文化」することです。

4. 日本側の役割③

品質基準を「見える化」する

海外BPOでは、どこまでを「合格」とするのか、その基準が曖昧なままだと、現場は正しく判断できません。

人によって「正確」の基準が違うからです。

そこで必要なのが、

  • OK例
  • NG例
  • 判断基準
  • エラー分類
  • チェック方法
  • 例外処理

などを明確にすることです。

特に、AIアノテーションやOCR結果の確認などでは、判断基準が曖昧だと担当者によって結果が変わってしまいます。

日本側とミャンマー側で同じ基準を共有し、

「誰が作業しても同じ判断になる状態」

を目指します。

それが品質の標準化です。

5. 日本側の役割④

ミスを「改善」に変える

どれだけ品質管理を徹底しても、人が作業する以上、ミスを完全にゼロにすることは簡単ではありません。

重要なのは、ミスが発生した後です。

私たちは、

「誰が間違えたのか」

だけを見るのではなく、

「なぜ間違えたのか」

を考えることを大切にしています。

例えば、

  • マニュアルが分かりにくかった
  • 判断基準が曖昧だった
  • 教育が不足していた
  • チェック工程に問題があった
  • 想定していないケースだった

というように原因を分析します。

そして、

  • マニュアルを修正する
  • チェック項目を追加する
  • 教育内容を変更する
  • 現地チームへフィードバックする

こうして、一つのミスをチーム全体の改善につなげていきます。

6. 日本側の役割⑤

現地チームを「管理する」のではなく「育てる」

ここは、私たちが特に大切にしている部分です。

海外BPOというと、

日本側が指示を出し、海外側がその指示どおりに作業する

という関係になりがちです。

しかし、それでは現地チームは成長しません。

私たちが目指しているのは、

「この場合はどうすればいいですか?」

だけではなく、

「この方法に変更した方がいいのではないでしょうか?」

と現地側から提案できるチームです。

そのためには、日本側が答えだけを教えるのではなく、

  • なぜこのルールなのか
  • お客様が何を求めているのか
  • この業務の目的は何なのか

まで伝える必要があります。

目的を理解すると、人は自分で考えられるようになります。

そして、自分で考えられるチームになれば、BPOは単なる作業代行から、業務改善を一緒に行うKPOへと進化していきます。

7. 「日本でチェックすれば品質が上がる」わけではない

ここで一つ、重要なことがあります。

日本側で全件チェックすれば、確かに品質は上げられるかもしれません。

しかし、それではBPOの意義がありません。

海外で作業したものを日本で全て確認していたら、日本側の負担が減らないからです。

だからこそ重要なのが、海外側が品質をつくる仕組みを構築すること。

立ち上げ当初は密に確認する。

回数を分散する。

現地へフィードバックする。

そして品質が安定してきたら、日本側の確認を段階的に減らしていく。

最終的には、通常業務は現地で品質を担保し、日本側は例外対応や品質分析、改善に集中する。

私たちは、この状態を目指すことが重要だと考えています。

8. 日本とミャンマーの役割は「上下関係」ではない

私たちは、日本とミャンマーの役割を、

「日本が管理する側」
「ミャンマーが作業する側」

とは考えていません。

それぞれに得意な役割があります。

日本チーム

お客様とのコミュニケーション、要件整理、業務設計、品質基準の設定、改善、最終判断などを担います。

ミャンマーチーム

実作業、一次品質管理、ダブルチェック、問題点の発見、改善提案などを担当。

そして両者をつなぐのが、日々のコミュニケーションと共通の品質基準です。

どちらか一方だけでは、良いBPOはつくれません。

9. AI時代、この役割分担はさらに変わる

そして今後、ここにもう一つのチームメンバーが加わり始めています。

それがAIです。

これからの業務では、

「AI」が、データ処理、OCR、分類、要約、一次判断などを担当する。

「ミャンマーチーム」が、AIの出力確認、例外処理、アノテーション、品質チェックなどを担当する。

「日本チーム」が、業務設計、品質基準、顧客対応、最終判断、改善などを担う。

という役割分担が増えていくと考えています。

つまり、これからのBPOは、日本×ミャンマー×AIという形へ進化していきます。

10. 日本側の仕事は「作業」から「仕組みづくり」へ

AIや海外BPOを活用すると、日本人の仕事がなくなると思われることがあります。

私たちは、そうは考えていません。

むしろ、日本側の役割はより重要になります。

ただし、その仕事内容が変わります。

これまで自分たちで行っていた作業を手放し、

  • 業務を設計する
  • 基準をつくる
  • 品質を分ける
  • 人を育てる
  • AIを活用する
  • 改善を続ける

という、より付加価値の高い仕事へ移っていく。

これこそが、BPOやAIを活用する本当の目的ではないでしょうか。

11. 私たちが目指す「一つのチーム」

A CAN SOLUTIONSでは、日本とミャンマーを別々の組織として考えるのではなく、一つのチームとして業務をつくることを大切にしています。

日本側がお客様の課題を理解する。

ミャンマー側が実際の業務を担う。

AIが発生した間隙を日本とミャンマーで共有する。

そして、仕組みそのものを改善する。

このサイクルを続けることで、品質と生産性を少しずつ高めています。

私たちが提供したいのは、単に「海外で安く作業する仕組み」ではありません。

お客様の業務を一緒に育てていくチームです。

12. まとめ

海外BPOの品質は、海外側だけの責任ではありません。

日本側にも重要な役割があります。

お客様の要望を理解する。

暗黙知を言語化する。

品質基準をつくる。

ミスを改善につなげる。

そして、現地チームを育てる。

この積み重ねによって、海外でも安定した品質を実現できるようになります。

海外BPOで本当に重要なのは、

「どこの国へ仕事を出すか」

だけではありません。

「日本と海外が、どのようなチームをつくるか」です。

私たちは18年間ミャンマーで事業を続ける中で、その重要性を何度も実感してきました。

これからも日本とミャンマー、そしてAI。

それぞれの強みを組み合わせながら、お客様とともに、より良い業務の仕組みをつくっていきたいと考えています。

次回予告

「BPOは『丸投げ』では成功しない ― 業務移管を成功させる最初の30日間とは?」

海外BPOの成否は、実は業務開始前の準備と「立ち上げ方」で大きく変わります。業務整理、マニュアル作成、トライアル、全数チェック、フィードバック、段階的な業務拡大。日本と海外のチームが安定して業務を進められるようになるまでの、最初の30日間に何をすべきなのかを、実際のBPO立ち上げの考え方から解説します。

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